映画メモ

観た映画記録帳。はっきり言って、長いです。お暇な人はどうぞ。

今日の映画キロク #14

古き良き時代―――1960年代の香港が舞台。
お互いに内に秘めた心の寂しさを持った男1人と女1人の淡くはかない愛の物語。

とても切なくて、とても美しい、はかない2人の想いがあるからこそ映るシーンはとても綺麗。
私も大好きな映画。 花様年華』(かようねんか)
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このブログを始めようと思ったきっかけの映画でもある。
映画を観ていなかった期間が長くて、ようやく今までの環境が変化したおかげで、新生活とともにまたあの頃の感動にどっぷり浸かろうと思った。
昔、映画人生を送っていた私が、また映画を見始めた第1回目の記念の映画となる。

今までトニーレオンのことは「英雄 HERO」で知っていたけど、当時劇場で見たときはガレッジセールのゴリに激似していると脳が錯覚を起こした為、
その後もある意味その「英雄」は違った意味で印象深いものとなってしまった。

当時は中国映画が盛んになってきた頃で、主役のジェット・リーが好きだった。でも今はトニーの方が好き。
トニー・レオン。――彼は香港の俳優で、当時のHEROに出てきた時は既に香港では超トレンド俳優だったと知ったのは、本当につい最近のこと。
・・・ごめん、顔がゴリに似てる、とか言って。だけど今HERO見ても、少しは思っちゃうw
HEROは泣ける映画で好きでもあるんだけどね。

ちなみにHEROでも今回の映画『花様年華』で共演している2人。トニー・レオンマギー・チャン
2人はこの時も、恋人役を演じているんだよね。だから男と女の噂があってもしょうがない。今トニーは「恋する惑星」で共演したカリーナ・ラウと結婚してこの間10周年を迎えてる。
でも未だに式典で一緒になるマギーに、マスコミが彼女との過去についての真相を彼に迫るんだけど『僕は(彼女が一緒になっても)気にしないよ』ってコメントしてる。その時も憂いある目で優しく微笑むって感じ。
トニーレオンしか出せない魅力は、彼の憂いある目を持っていることだと思う。でも奥さん曰く、トニーは神経質だって。(笑
マギーもカリーナ・ラウとは友達だし確執的なものはないって言ってるんだけど、・・・・w

でもどんなに歳をとってもとても歳を感じさせない格好良さと魅了させる人たちの演技はいつもとても素晴らしい。
花様年華でも、その演技は光っていて、映画自体淡々としているのに更に当時の懐かしさをBGMと映像でうまく表現している。
ブエノスアイレス」と似てる感じもあったな。同じ監督、ウォン・カーウァイの代表作だね。もう故人となってしまったレスリー・チャンが相手役だった。


さて、そろそろ『花様年華』の内容について書こう。

2人の出会いは、とても自然な流れで始まる。ある夫妻があるアパートに引っ越してくる。それが、チャウ夫妻。
そのチャウを演じるのはトニー・レオン
元からその小さなアパートに住んでいたのは、チャン夫妻。
チャン夫人を演じるのは、マギー・チャン。2人はお隣さん同士になる。

演技する名前が「チャン」ってご自分のお名前と被ってますけど、これは偶然・・・だよね?
そしてもうよくわからなくなってきちゃうのが、チャンだのチャウだの、どっちがどっちよ?っていう香港映画&中国映画あるある名前覚えるの苦手・苦悩が始まっている。
中国人や香港人自体、よくわからなくならねぇなって思うんだけどこれは日本でも言えることだよね。日本人でも多少困惑する時あるよね。
この映画のメイン出演者自体、5人くらいしか出てこないし、チャウ(トニー)が出てきても、奥さんは声だけの出演で終わる。
一方でチャン(マギー)の旦那さんも同じく顔すら映らない。だから映画としては珍しい映し方だなって思ったし、でもわざとこの2人に注目させることで分かりやすくしてるのかも。
これはウォン・カーウェイ監督独自の撮り方なのかしら…?定かじゃないけど「ブエノスアイレス」の時も要点となる登場人物は4人くらいだった気がする…。

花様年華の内容の中身は、ズバッと要約していっちゃえば、隣に引っ越してきたトニーがマギーとちょっと良い仲になって・・・って話。(かなり端折った(/ω\)
もうチャンだかチャウだか書いたって、書いてる本人自体もまともに覚えられないんだから俳優さんたちの名前出して書いちゃった方がわかりやすいって!
‥‥ということで、書いて説明することを初期から放棄しました(/・ω・)/ア、ソーレ!

既婚でありながら、心に空いたどうしようもなくやるせない、悲しさと切なさと心強さと・・・・(←篠原涼子の曲?)に変える相手を先の見えない不安に駆られながら手探りしていたら
自然と手を握り返してくれる人がいた。それはトニーであったり、マギーであったりする。
でも、その一線は越えてはいけない――。彼女は自分に置かれた過酷な心境に耐え難くて泣くし、彼はそれを優しく包み込む。
『ただ2人で会っているだけ』、その儚い時間だけが2人の心の傷を癒やしてくれる時間であったりもするんだけど・・・・・
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・・・・って感じでとてもとても切ない。いつもの待ち合わせ場所が自然と作られていく。(それがこの上の写真↑の場所でもあったりするんだと私は解釈しているんだけど…)
見られては困るし、関係がバレては困る。でもそこまでの関係ではない。でも――会いたい。

実は2人の相手は不倫していて、その相手は・・・隣人である。
だからどうしてトニー夫妻・・・・(いや、此処は誤解を招くので戻そう)チャウ夫妻が、
マギー・・・もといチャン夫妻の近くに(っていうか隣なんだけどw)引っ越してきたか・・・・わかった。
劇中ではそういう説明されてないけど、そういうことなんですよね、ウォン・カーウァイ監督?
実はこの映画、凄くカットされたシーンがあってそもそもこの監督自体がフリーダムすぎて計画通りに撮らないので出演者たちを結構毎回困らせているのは事実。
膨大な時間を費やして膨大な未公開シーンを沢山が出来上がる。そのカットされたシーンは少しだけ特典の方で観ることが出来る。
2人でダンスを踊ったり、とても楽しそうな雰囲気で撮られている。


サントラもとても素晴らしい1つの作品として聴けるし(作業曲でよく聴いてる)、
挿入曲としてジャズが入っているんだけど、当時の古典的な情景によく合っているんだなぁ・・・
1960年は生まれてもないし知らないんだけど、当時自分が生まれて初めに住んでたアパートと呼べるのか?なんなのかって感じの
おんぼろ住宅に住んでた記憶がすこーしだけあって(笑)、この映画に出てくる壁の薄いアパートや通路の狭さとか昭和感の結構なんでも色んな事に関してオープンだった頃とか
似たような感じが少し懐かしかった。
現代のようになんでも規制規制規制する時代じゃなかったし、厳しさも勿論あったけど(世間の目を気にするのは当たり前みたいなのとか、どこにでもいたお節介焼きのおばちゃんとか)
現代のような変な厳しさはなかったなーように思うんだよねぇ・・・


淡々としている映画ではあるんだけど、2人で食事するシーンがあって黙々と食べる2人。
でも映えるんだよね~
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このレトロなお皿の色は、50年代のジェード色。単色だけど、食べ物を載せるとよく映えるね。
映画の時代背景は60年代だからこの食器は40~60年代に流行ったアメリカン・アンティーク。
耐久性のある耐熱食器ファイヤー・キング。ジェード色(翡翠色)やターコイズブルーや他種類・カラーバリエーションな食器が流行っていたんだよね。
レトロなお皿とか写し方がまたいい味出てるw


切なさを感じさせるシーンや何度も流れるタンゴの曲がずっと耳に残る。それで、何度でも観たくなってしまうんだ…。




そして、最後のシーンは、本当にせつなくてチャウはどこまでもそれを背負っていく。
・・・映画の中で友人のピンからある噂を聞くんだけど、それが最後のシーンに描かれている。
辛い・・・とても辛いんだよね。
アンコールワットであることをしてから息を吹き込むシーン。
最後のシーンで自分が抱いた小さな芽(小さな罪)を埋め込むシーン。

今でも「ブエノスアイレス」ともに、評価が高いのは起承転結がしっかりと構成されているし、
大人の恋として観れることなんだろう。
子供が観ても理解出来なかったが、大人になったら分かりましたってレビュー書いてた人もいた。
大人のせつない1つの出会いと別れ、っていった方がいいのか。これは、恋ですってはっきり言ってもいいのか・・・。
まあ確かに子供が観ても理解出来ないだろうなぁとは思う。だから是非、大人の貴方に観て欲しい!オススメ映画です。


ちなみに、この『花様年華』は、前作「欲望の翼」の続編であり、花様年華の次は「2046」といわれているそうで。
欲望の翼では、マギーチャンが演じる女性の名前が既にチャンだったらしい。…の続編だからってことかw
自室ではマギーが演じるチャン夫妻が花様年華を歌い、壁を挟んだ隣の部屋ではトニー演じるチャウがラジオから流れてくる花様年華を聴いている。
花様年華とは「花のように綺麗な時間」という意味がある。
花とはすぐ散ってしまうもの、だからその時が綺麗なのだと。この意味を知って、なるほどと更に理解が深まったように思う。